育休退園と待機児童対策の両立は理論上不可能!
育休退園と待機児童対策の両立は理論上不可能!
育休退園問題については数多くの見解がありますが、問題発生後、最初の時点で最も支持が多いのは「待機児童解消のためには、やむを得ない」という意見のようでした。私が所沢市から最初の通知を受け取った時にも、待機児童のことを考えるとやむを得ないかなと思いました。
しかし、多くの議論を経て、「ただし、育休明けの際に再入園が保証されることが条件だろう」という意見が多数派を占めるようになっていきました。今でも「待機児童のことを考えれば、再入園が保証されるなら退園はやむを得ない」と考える人は多いと思います。
所沢市は3月の最初の通知の時点では、再入園のことなどまったく考慮していませんでした。保護者たちの猛抗議、世論の指摘を受けて、入園選考の際の「100ポイント加算」や「特別預かり事業」などを後付して、「再入園を100%保証する」姿勢を打ち出しました。
ところが、全体の制度設計をきちんと考えず、後付けで体裁だけ整えようとしたものだから、実際には運用不可能な内容になってしまいました。例えば、2歳児12人のクラスで4人が育休退園になったとします。そこに4人の待機児童が入園をします。その年度中は大きな問題はありません。
しかし、新年度の3歳児クラスになると深刻な問題が生じます。3歳児クラスの定員が15名以下だった場合、4人の育休退園児童が再入園をすると12人+4人=16人となり、定員オーバーです。この定員は、教室の面積などから国の法律で制限されるものですから絶対に超えられません。
定員オーバーだが、「再入園を100%保証」してしまった児童は入園させないわけにいかない。そこで所沢市が持ち出してきたのが「特別預かり事業」なるものです。
⇒所沢市ホームページ「特別預かり事業について」
この「特別預かり事業」がとんでもない内容なのです。
「保護者の育児休業を理由に退園となり元の園に戻れない児童を対象に、育児休業復帰後に、元の園において遊戯室等の在園児の通常保育で使用していない部屋等を使用して、通常保育と同様の保育を行います。」(所沢市公式ホームページより抜粋)
「遊戯室等の在園児の通常保育で使用していない部屋等を使用して」とは、どういうことか?
ホールや空き部屋で、定員オーバーになった子供だけ、別の保育士が個別に面倒を見るということです。これ想像できますか??
同じクラスの子供15名が隣の部屋で楽しく歌を歌っている間に、定員オーバーの子供が、一人だけホールで保育士と1対1で遊んでいる、という状況になるのです。
こんなこと、絶対あってはならないし、許してはいけないでしょう?
こんな制度で、「所沢市は育休退園される方には100%再入園を保証します。待機児童問題も解決します」と言い張っているのです。ありえません!
実際にこんなことは実行不可能なので、結局、「100%の再入園を保証するのであれば、空いた枠には待機児童を入れずに次の年度まで取っておく」ということにするしかありません。
というわけで、「育休退園した児童に100%再入園を保証するのであれば、その枠は待機児童対策にはほとんど使えない」という結論になります。したがって、「待機児童対策のためなら、育休退園はやむを得ない」という主張は成り立たないことになるのです。
この所沢市の後付けした「特別預かり事業」は、ツッコミどころ満載の間抜けな制度なのですが、マスコミは見落としているのか、ほとんど取り上げられていないようですね。どこかのテレビ局が見つけて、ツッコミを入れてくれると、視聴率取れると思いますよ。